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特報
2006.03.25
『君が代』反対元教諭は
『強制の怖さ気付いて』
東京都立板橋高校の卒業式をめぐり、威力業務妨害罪で起訴された元教諭の藤田勝久被告(64)に対する論告求刑公判が二十三日、東京地裁で開かれ、検察側は懲役八月を求刑した。家宅捜索まで行われたが、実際に卒業式が遅れたのはわずか数分。因果関係すらはっきりしない。事件後、都教委の締め付けは厳しさを増す。判決は五月三十日に下されるが、その行方は−。 (市川隆太、田原拓治)
■「コピーを配布 混乱なかった」
検察側の「式を妨害した」との主張に、藤田さんはこう反論する。
「卒業生入場の前、保護者が手持ちぶさたにしている間に、(日の丸・君が代強制を取り上げた)週刊誌のコピーを配ったが、隣の人に回してくれるなど皆さん協力的で、用意した二百部では足りなくなったほど。混乱などなかった。(校長らが)止めたのにもかかわらず配布したとされたが、その時、校長は来賓を接待していたんですよ」
「保護者の皆さんに『国歌斉唱の際は、できたら着席してほしい』と話していたら、教頭が『やめろ』と二の腕をつかんできた。その時『触るんじゃない』と言ったかどうか記憶がないが、『もう終わったよ』と言ったら教頭は苦笑いしていた。その直後、校長が来て『出て行け』と言ったので、(出口に)歩きながら『なんで追い出すのか』と抗議したが、検察は、これをもって『喧噪(けんそう)状態をつくり出した』と主張している」
藤田さんは「都教委と学校長が板橋署に出した被害届は『建造物侵入等』だったという」と話す。来賓の元教諭に建造物侵入容疑が成り立つのだろうか。
「卒業式の前、私が三年生の各クラスを回っていたことを指しているのかもしれない。『君たちには内心の自由があるんだ』という話をしたクラスもあったが、『頑張れよ』で終わったクラスもあった。でも、国歌斉唱の際に卒業生の九割ぐらいが着席し、その後、教師たちが次々と指導主事に調べられたというから、見せしめが必要だったんでしょう。元教師(藤田さん)が扇動したということにしたかったのではないか」
「でも、ある卒業生は『自分たちの意志で着席した』と実名で新聞に投書している。生徒たちは自分たちで選んだ『旅立ちの日に』という歌を、全盲の生徒のピアノ伴奏で合唱するなど、(君が代斉唱)推進派の来賓都議もほめたほど、式は整然と進んだのです」
「君が代」と言ったり「国歌」と言ったりする藤田さんは、どうやら“組合の闘士”ではなかったらしい。「校長と交渉するためには組合は必要。でも、組合幹部は好きじゃない」と笑う。「君が代の“君”が“あなた”だというのなら、私はいいと思う。卒業式で起立しなかった生徒たちも、サッカー応援では、ほっぺたに日の丸を書いている。君が代も歌いたければ歌えばいいし、歌いたくない人に強制すべきでもない」
■威力業務妨害罪警察官僚も疑問
今回の事件で、被害届が出された直後、ある警察官僚は本紙記者に「都教委は石原知事の意向をくんで、警察に話を押しつけたいのではないか。卒業式が五分遅れただけで威力業務妨害なんて、おかしい」とも話している。
■参列した保護者検察側証人なし
藤田氏は、こう危惧(きぐ)する。「推進派の人々は、日の丸や君が代を通じて、教師や生徒を統制したいのではないか。今や『国歌の適正な実施』が都教委の最大目標とされ、いじめ問題解決などは脇に追いやられている。日の丸が、君が代が、ということより、私が反発するのは、そこです。校長は気に入らない教師を一年で異動できるようにもなった。(都教委が本店で)学校は支店。学校長が支店長で、教員は上から決められたことをやらされる。これは、ファッショじゃないですか。ファッショはまず、学校から始まるのではないでしょうか」。その上で、「参列した保護者のうち一人として検察側証人として出廷しなかったことに感激しました」と付け加えた。
では、かつての教え子たちは、教員時代の藤田さん、さらに事件をどうみているのだろう。
藤田さんは社会科担当で、かつては野球部の監督なども務めた。
都立向島商時代に藤田さんが担任を務めた吉川哲也さん(45)=足立区、洋菓子店経営=は「先生が担任でなかったら、たぶん卒業できなかった」と振り返る。
「当時、私や仲間はやんちゃで問題生徒。毛嫌いされてる先生が担任になりそうだった際、藤田先生が率先して担任を引き受けてくれた。『オレでなきゃ、辞めちゃうだろう』って」
実際、吉川さんは不登校気味だったが、藤田さんは毎朝、家へ迎えに行って通わせた。同級生が通学途中、禁止されていたバイクで事故を起こしたこともあった。校長に知られれば「まず退学」(吉川さん)だったが、藤田さんの段階で「止めてくれた」。
「杓子(しゃくし)定規に考えれば、校長に連絡して処分というのが、正しいのかもしれない。最近の先生なら、そうするだろう。でも、先生は若い芽を摘まなかった」
熱血漢で声が大きく、ぶっきらぼう。それでいて、生徒に一度も手を上げたことはなかったという。事件については「私は君が代を歌うタイプ。でも、歌う、歌わないを強要するのはおかしい。要は先生の『左寄り』が気に入らないとか、来賓の都議が恥をかかされたとか、理由にならない理由でしょ」とみる。
「先生に『もう退職してるんだし、一つくらい前科がつくのも勲章』と励ましてやった。最初は元気がなくて心配だったからね」
もう一人、板橋高OBの教え子はこう話す。
「大学は働きつつ夜間に通っていたんですが、病気をして最終学年では学費が払えなかった。それを聞いた先生は、退職していて余裕もなかったろうに三十万円をポンと貸してくれた。頑張れとか、お前のことを思っている、とか言葉だけならだれでも言える。しかし、藤田先生はいつもそれを行動で示す人だった」
学校式典での日の丸、君が代での起立、斉唱は「内心の自由」だった。だが、東京では「国旗掲揚、国歌斉唱の適正実施」を柱にした二〇〇三年の都教委「10・23通達」で崩された。通達は職務命令に等しい。都立校では、不起立などを理由に停職や戒告、減給など教員三百人以上が処分されている。
■「生徒への強要」都教委の本音か
今月十三日には、「生徒への指導を教職員に徹底するよう」命ずる通達(3・13通達)が出され、教員だけでなく、生徒が不起立の場合にも教員が懲戒処分される危険が高まった。「生徒への強要」という都教委の“本音”が垣間みえる。
都教委は通達を「学習指導要領に基づく」と繰り返すが、東京大学の小森陽一教授は「憲法九九条は公務員の憲法順守を義務付けており、その憲法は思想良心の自由をうたっている。学習指導要領で拘束する論理は本末転倒だ」と話す。
「3・13通達は、生徒の思想良心の自由を直接奪おうとするもの。もはや、都立高校は教育の場でなく、国家の思想を貫くための訓練、調教、監視と処分の場になり下がった。その過程で、生徒の思想良心の自由を守ろうとしたのが藤田さんだった。彼の行動のどこが犯罪だというのか」
◆メモ <板橋高校事件>
2004年3月、都立板橋高校の卒業式で、来賓として出席していた同校元教諭、藤田勝久被告が「君が代」斉唱強制に反対し、保護者に着席を呼びかけるなど、混乱を招いたとして、威力業務妨害罪で起訴された。論告で、検察側は「自己の主張を満足させる目的で、式の円滑な進行を妨害した」と主張。弁護側は「被告の発言は開式前で威力業務妨害にはあたらず、公訴権の乱用」と無罪を主張。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060325/mng_____tokuho__000.shtml
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